労基法大改正で名ばかり業務委託が危険に|IT企業の対策
労働基準法「40年ぶりの大改正」議論で“名ばかり業務委託”が通用しなくなる理由
労働基準法の大幅見直しに向けた議論が制度設計フェーズに入り、「労働者」の捉え方や働き方の前提そのものが見直されようとしています。施行時期は後ろ倒しの可能性がある一方、副業・兼業、テレワーク、業務委託(フリーランス)が一般化した現在の実態に合わせて、企業の人材活用モデルへ強い影響が出る点は変わりません。特にIT業界で多い「常駐型の準委任」「実質指揮命令なのに業務委託」という“名ばかり業務委託”は、今後、経営リスク(未払残業・社保・行政対応・レピュテーション)として顕在化しやすくなります。
何が変わるのか:改正議論のコア(3つの論点)
公的な検討(労働基準関係法制研究会の報告書等)で、方向性として大きく次の論点が整理されています。
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「労働者」概念の再整理(労働者性)
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契約書の名称(業務委託・請負)ではなく、実態で総合判断されるのが原則です。公的にも「フリーランスであっても働き方によっては労働者に当たる」旨が明記されています。
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労使コミュニケーション(過半数代表など)の実効性
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36協定などを支える手続の実効性確保(適正選出・情報提供等)がテーマ化されています。
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労働時間法制の見直し(テレワーク、休息、割増賃金等)
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テレワークでは生活と仕事が混在しやすく、労働時間管理と健康確保の仕組みをどう設計するかが明示的な検討対象です。
また、勤務間インターバル等の「休息」や、法定休日の特定なども論点になっています。
さらに、副業・兼業の増加を踏まえ、割増賃金の“通算”の扱い(健康確保は維持しつつ、支払は見直しも含め検討)といった方向も示されています。
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IT業界で“名ばかり業務委託”が破綻しやすい典型パターン
次のような運用は、実態として「雇用(労働者)」と評価されるリスクを上げます(※ポイントは「指揮命令・拘束・代替可能性」などの総合判断)。
- 出退勤・稼働時間を指定し、勤怠の承認をしている
- 作業手順・優先順位・進め方を日々指示している(常駐で朝会/夕会、チケットの割当など)
- 成果物ではなく「労務提供そのもの」を評価している(準委任でも運用が実質“勤務”)
- 代替要員を自由に立てられない(本人固定)
- 会社のアカウント/端末/権限に組み込み、組織の一員として扱っている(チャット・指示ログが残る)
近年はチャットやチケットシステムのログが濃密に残るため、「契約書は業務委託」でも、実態が説明できないと弱い構造になりがちです。
企業が今すぐ取るべき対応(チェックリスト)
A. まずは“類型の整理”(どれで行くかを決める)
- 派遣(指揮命令をしたい/常駐前提なら現実解になりやすい)
- 請負(成果物・検収が明確、委託先が指揮命令・工程管理)
- 準委任(成果ではなく業務遂行の支援。ただし“勤務化”を徹底的に排除)
B. 業務委託を続けるなら、運用を“成果物ベース”へ寄せる
- 依頼は「成果物・受入条件・期限・品質基準」で定義(“作業指示”を減らす)
- 作業場所・時間の拘束を最小化(常駐でも「席」ではなく「作業単位」で設計)
- 日々の指示命令ではなく、委託先側のPM/リーダーに裁量を寄せる
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検収・再委託/代替要員の可否・責任分界(瑕疵/再作業)を明確化
C. “ログが証拠になる”前提で、説明可能性を作る
- 指示ログ(Slack等)は、成果物要件の提示・受入確認中心に再設計
- 勤怠承認・休暇申請のような「雇用っぽい運用」を排除
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契約と実態が一致していることを、監査可能な形で残す(契約更新時に棚卸し)
まとめ
今回の見直し議論は、単なる条文修正ではなく、「誰を労働法の保護対象として捉えるか」を現代の働き方に合わせて再定義しようとする流れです。
IT業界で慣行化した“名ばかり業務委託”は、契約書では守り切れません。「契約類型の選択」+「実態運用の再設計」をセットで進めることが、最も費用対効果の高い予防策になります。
